膀胱の腫瘍

【概要】
犬や猫の膀胱にできる腫瘍は、比較的まれですが、特に犬では「移行上皮がん」と呼ばれる
悪性腫瘍が多くみられます。猫では膀胱腫瘍は極めてまれですが同様に悪性であることが多
いです。
初期症状としては、頻繁に排尿しようとする、血尿が出る、排尿時に痛がる、尿が出にくい
などの排尿障害が見られます。膀胱炎と似た症状で始まることが多く、消炎剤や抗生剤など
の膀胱炎の治療を行っても一時的に良くなっても繰り返す場合には腫瘍の可能性を考慮する
必要があります。
膀胱の腫瘍は、時間の経過とともに尿道を塞いだり、他の臓器に転移したりする恐れがある
ため、早期の診断と適切な治療が重要です。

【診断】
診断の第一歩は、超音波(エコー)検査です。腫瘍が膀胱の壁にしこりとして確認されるこ
とがあります。加えて、尿検査で血尿や異常細胞の有無を調べたり、レントゲン検査で膀胱
や周囲の臓器の状態、血液検査で腎臓の機能や全身的な状態を確認します。
さらに詳しく調べるためには、膀胱の腫瘍の一部を採取して病理検査を行ったりすることも
あります。これらの検査により腫瘍の種類や広がりを把握し、治療方針を決定します。

【治療】
膀胱腫瘍の治療は、腫瘍の位置や広がり、種類により選択されますが基本的な治療方法とし
ては外科的治療が第一選択となります。
● 外科手術
膀胱の腫瘍の場合には外科的治療が最も効果的と言われています。初期の場合には外科手術
のみで完治が期待できます。進行した場合には腫瘍を完全に切除できないことがありますが、
その場合には手術により可能な限り腫瘍を取り除いたのちに追加の治療を行います。
● 抗がん剤・分子標的薬
犬の膀胱腫瘍で最も多い「移行上皮がん」の場合には抗がん剤の一種である分子標的薬(腫
瘍の増殖を抑える薬)を用いた抗がん剤治療が効果的です。これらの治療は、腫瘍の進行を
抑えたり、症状を軽減したりする目的で用いられます。
状況に応じて、手術と抗がん剤治療を併用する場合もあります。

【当院の取り組み】
当院では、まず負担の少ない検査(エコー、尿検査、血液検査)を行い、必要に応じて細胞
を取る病理検査など精密な検査を段階的に進めます。
腫瘍の可能性が高いと判断された場合でも、いきなり手術を行うのではなく、腫瘍の部位や
広がり、動物の年齢や体力を踏まえて、最適な治療方法をご提案します。
手術が難しい場合には、抗がん剤などの分子標的薬などの内科的な治療を中心とした方針を
立て、生活の質を保つことを重視した診療計画を立てています。
飼い主様と一緒に「無理のない治療」を選ぶことを大切にしています。

【通院・入院の予測】
初期検査(エコー、尿検査、血液検査)は日帰りで行えます。
手術を行う場合は、通常 7〜10 日程度の入院が必要になります。
抗がん剤や分子標的薬による治療を行う場合は入院することは少なく通院にて治療が可能で
す。通院の頻度としては 1〜2 週間に 1 回の通院を継続していくことが多いです。
治療内容によって通院頻度や期間が異なるため、詳しくは獣医師とご相談ください。

【費用の予測】
・初期検査(エコー検査、尿検査、血液検査):10,000〜15,000 円程度
・精密検査(病理検査など):20,000〜40,000 円程度
・手術費用:250,000〜350,000 円程度(入院費含む)
・抗がん剤・分子標的薬治療:1か月あたり 10,000〜30,000 円程度
※治療の回数や方法により費用は異なります。初診後に治療方針が決まった段階で、具体的
な費用の目安をご案内いたします。