猫の伝染性腹膜炎 FIP
【概要】
猫の伝染性腹膜炎(FIP)は、発症すると治療を行わない限りほぼ 100%の確率で死亡する
病気です。10 年ほど前までは「不治の病」とされていましたが、近年治療法が確立され、
治癒するケースも増えてきました。
FIP の原因は、猫の腸内に常在する猫コロナウイルスの突然変異です。このウイルスは人
間のコロナウイルスとは異なり、通常は毒性が低いですが、突然変異によって強毒性に変
化し FIP を発症します。
特に 1~2 歳未満の若い猫に多く見られますが、症状に特徴がなく、元気や食欲の低下、嘔
吐、下痢などが主な症状です。初期段階では他の病気との区別が難しいですが、これらの
症状が 1 週間以上続く場合は注意が必要です。
現在は治療薬が開発されており、100%の治癒率ではないものの、回復する可能性がある
ため、元気や食欲の低下が続く場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
【診断】
FIP は症状に特徴がないため、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などを組み合わせ
て診断します。多くのケースではこれらの検査で診断が可能ですが、他の病気との鑑別が
難しい場合は、特殊な血液検査や病理検査を行うこともあります。
【治療】
以前は有効な治療法がなく、発症するとほぼ 100%の確率で死亡していました。しかし、
近年、FIP に対する治療薬が開発され、治療が可能になっています。
ただし、日本国内ではこの治療薬を入手することができず、海外の薬を使用する必要があ
ります。一部、国内で入手可能な薬もありますが、非常に高価で流通も不安定なため、現
実的な選択肢とは言えません。
治療法には、注射と飲み薬の 2 種類があります。
• 重症の場合:注射を中心に治療を行います。
• 軽症の場合:飲み薬での治療が可能です。
また、重症例では栄養管理や点滴などの補助治療が必要になることもあります。
【当院の取り組み】
当院では FIP の治療に積極的に取り組んでおり、重症から軽症まで幅広い症例に対応して
います。
• 重症の場合:1~2 週間の入院による集中治療を行い、状態が安定してから在宅治
療へ移行します。
• 軽症の場合:飲み薬が飲める状態であれば、できる限り在宅治療を中心に進めます。
【通院・入院の目安】
FIP の治療は、症状や重症度に応じて「通院」または「入院」が必要になります。
• 入院が必要な場合:重症で自力で食事ができず、飲み薬の投与が難しい場合。
• 通院で治療できる場合:軽症で自力で食事が取れ、飲み薬の投与が可能な場合。
重症例 状態が安定するまでに数週間かかることもありますが、多くのケースでは 1~2 週
間程度の入院で症状が落ち着きます。
軽症例 通院頻度は数週間に 1 回程度から、数か月に 1 回程度と症例により異なります。
なお、詳細な治療プランについては、担当獣医師とご相談ください。
【費用の目安】
●診断費用(3~5 万円程度)
FIP の診断には、他の病気との鑑別が必要なため、以下のような検査が行われます。
• 血液検査
• レントゲン検査
• エコー検査
• 必要に応じて細胞診
FIP の治療は 3 か月(84 日間)継続することが一般的です。症状の重さにより費用が異な
りますので、必ず担当獣医師にご確認ください。
●重症例(入院+治療薬+点滴+栄養管理)
• 入院治療(1 週間):1 日約 2 万円 × 7 日 = 約 14 万円
• 1 か月目:5~10 万円
• 2 か月目:5 万円程度
• 3 か月目:5 万円程度
• 総額:30~40 万円程度
●軽症例(主に在宅治療)
• 1 か月あたり:3~6 万円程度
• 3 か月総額:9~18 万円程度
上記はあくまで目安の費用です。猫ちゃんの状態や体重によって費用が変動することがあ
りますので、詳しくは診察時にご相談ください。